アルマグロで日本の劇団クセックACTは再びセルバンテスの作品を上演する
劇団クセックACTのアルマグロ公演は3度目
10人の役者が50人の登場人物を演じる

 2002年、カルデロン・デ・ラ・バルカの『人生は夢』によって観客を魅了した劇団クセックACTは、その後アルマグロで公演することが必然のようになった。事実、2005年には『ドン・キホーテ』を上演し、2年後の今年2007年には,同じくセルバンテス作『ヌマンシア』を持ってきた。昨夜がアルマグロ市立劇場の初日だった。


 このセルバンテスの作品を取り上げることになったのは、ある偶然からだと翻訳・脚本担当の田尻氏はスペイン語で次のように語った。「当初は『ラ・セレスティーナ』を上演するつもりだったが、アルマグロ国際古典演劇祭の委員長ミリオ・エルナンデス氏に『ヌマンシア』もやってみたいのだがと漏らしたところ、まだ、翻訳も脚本もできあがっていないのに、委員長の『それにしよう』という一言でこの上演が決定した。さらに、問題は短期間に翻訳し、10人の役者で50人の登場人物を演じる脚本を作らねばならなかったが、『君たちならできる』という委員長の励ましで、1人の役者が2役3役を演じる脚本が完成した。」

 役者たちの1人火田詮子さんは、4役を引き受けているが、その中で母親役が口にすることば、「『戦争は最後に母親や子どもを殺す』というセリフは、現代にも通じるのではないでしょうか」と語った。「確かに男たちは戦場で戦って死にます。しかし、女子どもも戦争が起これば死んでしまうのです」と付け加えた。

 日々の仕事に疲れ果てた中年サラリーマンを演じる榊原忠美氏は「ポケットから戦争、愛、悲劇を象徴するモノを取り出します。これが作品への導入となります」と語った。この中年サラリーマンは劇中では、やはり閉塞状況に追い込まれたテオヘネスの役も演じる。

クセックACTの『ヌマンシア』は、いままでの『ヌマンシア』のように「愛国心」を鼓舞する上演意図は皆無
名誉と戦争

 演出の神宮寺啓は、この戯曲にはいくつかのテーマがあるが、「名誉」と「戦争」という2つのテーマが重要ではないかと語った。また、チラシの写真を示しながら、「女性の大理石のような体と暴力的に赤い布で覆われた顔、これがこの芝居を象徴している」と強調した。「衣装は無国籍的だが、12kgもある防音シートをかぶることで、日常生活の重圧を意図した」とも語った。

 脚本を担当した田尻氏は「いままでの『ヌマンシア』の上演は、スペイン内戦中にマドリードで上演されたように、祖国を防衛する政治的意図があった。しかし、クセックACTの『ヌマンシア』は、そういった愛国心を鼓舞するのではなく、愛国心というテーマを乗り越えたところにある人間の尊厳にまで行き着いた」と解説した。

 劇団クセックACTの『ヌマンシア』は今夜も市立劇場で上演される。

パトリシア・セラーノ記者