プロフェソール・ヨイチがスペインでクセックを愛する話 #2
日本に帰ってきてから、アルマグロ古典演劇祭からメールが来た。
「来年度は『ヌマンシア』でOKだね?」
で、ぼくは、確約できないので、正直に 「まだ、台本ができるかどうか、自信がない。何しろ『ヌマンシア』の登場人物は30人近い。クセックの劇団員は10人。どうしたらいいか悶えている。もしできなかったら、『セレスティーナ』を持っていってもいいのだが」...
というと、すぐにメールが来て、 「クセックは10人の役者で登場人物30人の芝居ができることは、われわれは分かっている。だから、『ヌマンシア』なんて、できるはずだ。それをわれわれは期待している。それに2008年は「演劇における女性」というテーマを考えている。だから『セレスティーナ』は2008年に持ってくればいい」
ええっ!これって、来年も再来年もアルマグロに来いということ? うーん、僕って不死身じゃないよ。
外国で公演するって大変な準備がいる。
奇妙なことだが、スペイン語の字幕制作に、原文を参照しながら、僕の訳した日本語をスペイン語に再構築していかないといけない。これって、奇妙な作業だよ。
さらに制作者として、渡航費、舞台装置製作費、ホテル代、食事代、これら諸経費をすべて交渉しなければいけない。これらを煮詰めていくだけでも大変な労力だ。ようやく契約書を取り交わしてから、今度はスペイン作家協会に上演許可を取らないといけない。今回のように現代作家だと、翻訳権を取らないといけない。それと平行して舞台照明図、音響設計など、舞台廻りも考えないといけない。楽屋の部屋割り、衣装の洗濯まで手配する。
第一スペインとの時差は7時間。向こうが協議して返事をくれるのは夜中の12時以降。つまりはスペインの昼休みが終わってからメールが来る。これにメールで返事をし、二三回、往復すると、夜中の三時だ。しかし、翌朝7時には起きて、いつものように大学で講義。
この不死身、いつまで持つだろうか。自分でも不安になることがある。
田尻陽一

