(4) ランサ紙 2007/7/3
クセックACTの『ヌマンシア』は愛国心ではなく人間の尊厳に焦点
「泣くことと笑うことが好きな」スペイン人に関心を寄せる演出家
劇団クセックACTによって、ミゲル・セルバンテスの『ヌマンシア』が昨日から市立劇場で上演されている。翻訳担当の田尻陽一氏は「愛国心ではなく、人間の尊厳に焦点を当てた」と語り、続けて「この作品は間違いなく平和を志向している。なぜなら戦争になれば、人間は理性をなくし、狂気に陥り、揚げ句の果てには名誉も何もかもなくなるからである」と言う。
田尻氏によれば、この作品はアルマグロ国際古典演劇祭の委員長エミリオ・エルナンデスとの会話から上演が決定されたという。さらに、エルナンデス氏はセルバンテスの固いスペイン語を翻訳するのに手こずっていた田尻氏を励まし、10人の役者に50人の役を振り分ける脚本を書くことに難渋していたときも、「あなたならできる」と励まし続けたという。
「辛い仕事」だったが、5月に初演したときは「素晴らしい仕事」として日本の観客に受け入れられたと田尻氏は付け加えた。さらに日本の観客は2000年も前の出来事であっても、アメリカ軍の侵略に対して沖縄の人々が集団自決を計ったこと、さらに今イラクで起こっていることなど、現代の問題として捉えてくれた、とも付け加えた。
戦争という正気をなくした状況で、自殺することが「名誉なことなのか、滑稽なことなのか」、これが劇団クセックACTの上演する『ヌマンシア』のテーマの1つであると田尻氏はいう。さらに演出の神宮寺啓氏は、スペイン古典劇にも現代劇にも造詣が深く、「笑うことと泣くことが好きな両極端な性格を持った」スペイン人の性格に関心を寄せている。
日本ではガルシア・ロルカの作品はよく上演されるが、彼のエロス的要素が排除されがちであり、唯一、スペイン演劇の古典も現代劇も上演できるのは劇団クセックACTだけであると田尻氏は言った。
役者の1人榊原忠美氏は、テオヘネスと中年サラリーマンを演じるのだが、現代に通じる携帯電話を持って舞台に上がる。もう一人、火田詮子さんは、マルキーノ、ヌマンシア女、母親役を演じるが、戯曲の現代性、つまり、「戦争は、最後には女子どもを犠牲にする。」という正鵠を得たセリフに驚いたという。「まさに戦争では、男は攻撃し、前進し、退却するが、女子どもは無防備に放置されるだけだ。」と付け加えた。
A.R.記者

