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アラバールからの「愛の手紙」


劇団クセックACT設立35周年記念 ● 原作 フェルナンド・アラバール 『愛の手紙-中国風殉教』 『建築家とアッシリア皇帝』 ● 翻訳・脚色・構成 田尻 陽一 ● 構成・演出・舞台美術 神宮寺 啓 名古屋公演:愛知県芸術劇場 小ホール

  • 5月21日(木) 19:30~

  • 5月22日(金) 19:30~

  • 5月23日(土) 15:00~

  • 5月24日(日) 15:00~

福井公演:「響のホール」福井まちなか文化施設

  • 6月19日(金)19:00~


 

● 作家紹介

スペインの作家 フェルナンド・アラバール(1932~)は不条理劇の雄として名高く、これまでに100本以上の戯曲を書き、1970年代には来日もしています。アラバールの作品には、悲劇と道化芝居、詩と俗悪、愛とエロチシズム、悪趣味と洗練された美観、神聖と冒涜といったものが同居しています。今もスペインで現代劇作家として活躍。主な作品として『ファンドとリス』『戦場のピクニック』『建築家とアッシリア皇帝』などがあります。

 

● 作品について

『愛の手紙-中国風殉教』(1999)は母親のモノローグ劇です。母親は息子が少年だったころに語ってくれた中国の寓話『愛の殉教』を思い出し、次のように言っています。 二人の恋人の無残な話(逃亡した奴隷の話) 看守が二人に足枷を嵌め、深い深い井戸の底に閉じ込める。 お互いの足と足とを鎖で繋いで。で、数ヶ月経って、看守がその井戸を開けると、二人は死んでいる。 お互いに貪りあって。 井戸の底に縛り付けられたまま 市街にはウジ虫の山。 深い井戸とは1936年に勃発したスペイン内戦のことです。母親から猫かわいがりされていた少年のアラバールは、突如として失踪した父親の不在の原因は母親の密告であったことを知ります。 少年から青年への移行期にあったアラバールは、母親との親子関係を否定し、スペインを捨て、フランスで演劇活動を開始します。彼の作品の底に流れる異常なまでの母親に対する憎悪は、こういったおぞましい歴史的な事実に由来しているのです。その典型的な作品が『建築家とアッシリア皇帝』(1966)でしょう。そこで、『建築家とアッシリア皇帝』から端的に母親憎悪を示す場面を抜き出し、『愛の手紙-中国風殉教』のなかに埋め込んでみました。そうすることで、息子の母親に対する嫌悪と母親の息子に対する近親相姦に近い異様な愛情を際立たせることができるだろうと考えたからです。 過去を回想し現在を妄想する母親、次々と役柄をかえながら「憎悪ごっこ」に戯れる建築家と皇帝が繰り広げる醜悪な美しさ、それはまさに「愛」そのものであると思うのですが、歴史に翻弄された親子の「愛」を劇団クセックACTの舞台で堪能してください。

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